お金をもらって漫画を描くということ

8月 10, 2019

今日はちょっと辛口、
まだデビューできていない方、
仕事を切られてしまった方への手紙です。

商業的に漫画を描くこと
=漫画でお金をもらうこと
=出版社も利益を上げるということ
をもっと真剣に考えて欲しいなあと
投稿の方とやり取りしていて、
出版社サイドにいる人間としては切に思います。

売れない漫画、お金にならない漫画に価値はない
という気はさらさらないのですが、原稿料をもらう以上、
売れる漫画を漫画家は目指す責任があるし、
編集者(出版社)は、漫画家さんが商業漫画家として
やっていける稼ぎを生み出す漫画を描いてもらい、
かつ会社もやっていけるような漫画を描いて
もらうべく、販売含め様々な努力義務を果たすべきです。

でないと給料もらえませんし、原稿料も
出せませんもんね。

ですので、
「漫画でお金をもらうこと」
「売れる漫画を描く」
「漫画が売れるということはどういうことか」
ということ等々をもう少しだけ考えて欲しいんです。
(こういうことを考えなくても売れる人は色んな意味で
はなから能力が高い人なんでちょっと置いておきます)

デジタルの時代になり、
出版社に依存せず、ほぼコストゼロで、
多くの人に漫画を届けられる時代になったので
自分で描いて自分で売って稼ぐことが可能になりました。

それでやっていける方もたくさん出てきていると
思います。
でも最初から全部自前でという方はまだまだ少ないのでは
とも思います。

ほとんどの方は、原稿料をもらって(もらおうと思って)
執筆をされているかと思います。

仕事ください、すぐ仕事できます、という感じで
ご応募いただく方が多いのですが、
申し訳ないですが、今のあなたの漫画ではお金が取れません、
というお返事をせざるを得ない方が多いのが実情です。

漫画が拙い、ということもありますが、
その方向の漫画でお金取れると思いますか?と
聞きたいことが多々なんですよ。

(だったらお金になるよう育てろよということもありますが、
ちょっと厳しい返事をすると、ほぼノーリターン。
改めて新作のネームを送ってくる人はほんの一握りです)

かつて、漫画を世に出す方法はほぼ雑誌掲載でした。
雑誌というのは、パッケージ商品です。
なんつーか抱き合わせ商品みたいなもんです。

売れるかどうかわからない作品もお試しで
載せることができます。

イマイチだった作品は、単行本にしなければ済むだけです。

しかし、デジタルの時代は、あなたのその作品1本が
単体で買われ、お金が払われることになります。

あなたの作品は、1P10,000円×24=240,000円回収できる
でしょうか。

これは漫画を描くコストだ!と思われた方、
すいません、私は売れる見込みのない(と私が判断する)
漫画に24万ものお金を出せないです。

コストは常に回収されなければなりません。

24P1話100円、40%のロイヤリティ(デジタル版元の平均はもっと
低いかもしれません)として、1話40円の収入だと
6,000のダウンロードが必要です。

でも、これでプラスマイナスゼロ、あなたの原稿料しか回収
できていません。
私の給料はまだ出ません。。。

6,000というのは、かなりの数です。

無料の作品なら大した数字ではありませんが
有料なら悪くない数字です。

売れている、儲かっていると言われている
TLでもこの数字に達しない作品はたくさんあります。

映画の世界でもそうですが、いくつかの大ヒット作が
赤字分を埋め合わせているというのが現実です。

ヒット作だけ作れればいいのですが、
そういうわけにもいかないので、
いけそうと思う作品を複数作って、
その中からヒットが出るのを期待するという感じで、
ある程度の規模の会社はやっています。

デジタルになって、
以前より簡単にデビューできるようになりましたが
お金が取れる漫画の水準というのは、
かつてとさほど変わっていないと思います。

紙のように量の制限が無い分、水準を越える漫画が
パブリックになる量が増えているとは思いますが、
商業として成立する水準自体はほぼ変わらない
と思っていただいていいと思います。

あなたがなぜ、なかなかデビューができないのか、
なぜ、まがりなりにもデビューしたものの、
すぐに仕事がなくなってしまったのか、
それはあなたの漫画がお金にならなかったからです。

身も蓋もない言い方ですがこれが事実です。
特にIT系はほぼ数字がすべてなので。

(例外として、「すごい漫画」を描く人は
仕事がなくなりません。すごい漫画は必ず救う人がいて
いつか売れるだろうし、
売れなかったとしても何らかの形で認められるからです。

え?必ずしもそんなとことないよ? 
いえ、私はそう信じてますし、
そういう漫画を作りたいと思っています。

私は、編集としてこの仕事を続けるために、
お金を稼ぎたいですし、これと思った作家さんには
投資したいです。

自分がデビューさせた漫画家さん、
原稿料をお支払いした漫画家さんには、
きちんと利益を出して、
長く漫画家としてやっていって
いただきたいと思っています。

その覚悟でやっているので、どうしても
厳しくならざるを得ません。

かつて勤めていた会社の社長が

「少なくともワンルームマンションが一つ
買えるだけの金額を漫画家さんが稼げるように
してあげるようにしなさい」

と若い編集者たちに言っていました。
同感です。

私も日々、自分の方針に間違いはないかと
自問する日々です。(ちょっと嘘かも)

この連休、コミケが終わった後にでも、
自分の作品を見つめてみる機会を持つのは
いかがでしょうか。

ウエー長いおやじの説教になってしまいました。。。

ではまた!

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