漫画の無料配信と有料配信について考えてみる

5月 10, 2019

今回はある若い作家さんとのやり取りをもとに、
漫画の無料配信と有料配信を、
プロの漫画家として飯を食っていく、
という視点から考えてみました。
(許可をいただき固有名詞が分からないようにして
 一部変更してあります)

私が今、主に関わっているのがデジタルコミックです。

デジタルコミックと言っても、色々あって簡単にひとくくりに
できないのですが、今回は無料配信と有料配信について
絞って考えてみたいと思います。

但し、あくまでも私見です。

デジタルコミック以前、
漫画は雑誌の販売とコミックスの販売で主な利益を出していました。
(アニメ、ゲーム、パチンコなどの二次使用はとりあえず置いておきますね)

ごく当たり前のことなのですが、
今ではWEBやアプリなどで無料で漫画を見せて、
広告をクリックさせるなどして、
漫画そのものの販売以外で利益を上げるビジネスモデルが
増えてきました。

それ自体は、紙の売れ行きの減少を補うことなども含め、
一見いいことのように見えますが、
急激に漫画のビジネスが変わってきたため、
弊害もいろいろと起きているように思います。
(私の視点では…ということですが)

そんなことを普段からツラツラと考えていた時に、
原稿の応募をいただいた方へお送りしたのが
以下のようなメールです。
(一部変更してあります)

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なかなか意見言っても、こうやって
メール下さる方少ないので、せっかくですので
もう少し私の思うところ言わせていただきますね。

どちらかでトップを取られたということですが
それは有料配信でしょうか、無料配信でしょうか。

もし有料で1位なら、他社での有料配信の結果を待ってから
次のステップを考えられても問題ないと思います。

どちらかの有料でトップを取られた作品なら、
ほかのサイトやアプリでも有料でたぶん売れるだろうし、
そうすると執筆の誘いも、いろんな会社からくるし、
単行本化の話も出てきたりすると思いますので
あまり心配ないと思います。
手をあまり広げるよりは、
今描かれている路線で突っ走ったほうがいいのではと思います。

ただもし無料で1位だったのなら、
それ自体を少しだけ、
疑ってみたほうがいいかもしれません。

(もし有料で1位だったのなら、以下は読まなくていいと思います。)

私は、無料配信作品を作っていた編集チームにも
少し関わっていたのでわかるのですが
無料のアプリで1位になったり、上位に来ても、
コミックスは売れないし、販売もダメだった作品が
いくつもありました、というか全ての作品が販売で結果が出ず
会社は赤字でお金になりませんでした。

私のそれらの作品に対する評価は
そんなに悪くはない、もっと良くできるが、
その時点では、
「無料なら読む人いるだろうけどお金にするのは難しいだろう」
というものでした。
(ちなみに私が責任者になる前に作られた作品です)

こんな風に言うと、お金のことばかり言っているようですが、
お金になる作品=お金を払ってでも読みたい良い作品
という風に私は考えています。

何が言いたいかというと、
無料の作品と、有料の作品、つまり金を払ってでも
読みたい作品というのは、単純なランキングの問題でなく、
大きな違いがあるということです。

どちらがいいか悪いかは、一概に言えません。
今は、広告収入をベースに考えた漫画もたくさんあり、
マネタイズの方法が違うからと言って、
それ自体を否定することはできません。

私は基本、アプリのような広告配信や、
アプリのダウンロード数を増やすことで
なにかしらのマネタイズを行うという形ではなく、
漫画としてお金になる漫画、お金を払ってでも
読みたいと思ってもらえる漫画を作ってきたつもりですし、
今もそうです。

一方、無料作品を制作しているアプリの会社は、
漫画の作品数を増やすことや、無料で見せることで、
ユーザー数、アプリのダウンロード数を増加させ、
その数をいろんな形でマネタイズさせています。
一番わかりやすいのがアプリ内にある広告ですね。
(すごく単純化して話してます)

自らが作った漫画そのものを売って大きな利益をだして
いるのでははないわけです。

ユ-ザー数が増えれば、当然漫画を見てもらえる
回数も増え、広告収入も増えますが、どこまで行っても、
それが無料なら、無料という場所を離れない限りは
売れている漫画と同じ場所での評価にはなりません。

なんというか、見られ方が違うわけです。

YouTubeの映像は無料だからあれだけの人が
見るわけで、有料ではまた違った順位付けになるのでは
と思います。
思いませんか?

そういう意味では、申し訳ないのですが
お送りいただいた漫画は、私の力では
うまくマネタイズできないなあと判断したということです。
(イコール一般的に面白くない、誰がやっても売れない、
では全くありません。)

本当に面白い、売れる漫画を描けば
一度二度厳しいことを言われても、
評価は後からついてきます。
誰かが、声をかけてくれます。

—————————————

というようなことを書いてお送りしました。

話が長くなって自分でも言いたいことが
ごちゃごちゃになってしまいました。
すいません。

続きはまた改めようと思いますが、
私の考える、無料漫画が新人の方に対する
弊害の大きなものは…

・これまでならプロとしてデビューできるレベルに
 なっていない人まで次々にデビューしている感が。
 (お金をもらって漫画を描いているという意味で)
 無料配信でデビューしても、プロマンガ家として
 喰っていけるとは限らない。
 無料はあくまで無料!
 力がつく前に安易にデビューすると、
 使い捨てられてお終い、のケースも。
 デジタルは、数字の結果がすべてを判断されてしまうので。

 新人漫画家を切るのは簡単です。

 「前作の結果が良くなかったので」

一回三振したくらいで、それはないよね、
と思うかもしれません。

でも未熟な新人2軍選手を1軍のバッターボックスに立たせた責任を
編集者や配信サイトは取ってくれません。

ネクストバッターズサークルには
次の新人がすでに待機しています。

漫画家になりたい人が沢山いる現状でかつ、
作家を育てられる、目利きの編集が少ない状況では
数字がすべてなので、「はい次」
それが現実だったりします。

それで皆さん、本当によろしいでしょうか?
ということでしょうか。

もちろんこれは、編集者サイドの在り方から発生している
問題なので、個々の現場で、より良い作品作りを
心がけていかないと、簡単には解決しない問題ですね。

ではまた!

  

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